泉谷しげる

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説明

泉谷しげるは、webmasterにとって『愛すべきオヤジキャラ』です。

おそらく40歳未満の人は、自分が生まれる前の社会状況を断片的な知識でしか知らないため、このオヤジが言っていることの半分も理解できていないと思うので、あえて解説を書いてみます。 ご本人は、「勝手に解説なんかするんじゃない」「わからない奴はわからなくてもいい」とか言うかもしれませんけど、書きます。

スタイル

泉谷しげるは、メディアに出るたびに怒鳴っている印象があります。 Webmasterは、これがこの人の芸風だと思います。 2017年現在の世相は、「正論で波風立てるよりも、口をつぐんで偉い人の悪事に加担しよう」という方向ですが、泉谷しげるはこの世相に真っ向から対峙しています。 波風は立てていますが、言っていることはまともです。 他人のまともな意見に対して、「気に入らないからお前の意見を聴く必要はない」と決めつける現在の世相にwebmasterは危険を感じます。 そして、批判を承知の上でまともな意見を表明する人物が減っていることにも、危機感があります。

本気で怒らなければならなかった時

泉谷しげるが怒っているのは、ほとんどが芸風だったり照れ隠しだと思います。 しかし、「この場面は本気で怒らなきゃダメだろう」と泉谷しげるに共感した状況がありました。 2013年12月31日の紅白歌合戦のことです。 この時の歌は『春夏秋冬』(タイトルに2014と追加してあったので歌詞を変えてあったのかな?)です。 歌詞を聴けばわかる通り、「愛のない家庭に育ち、救いのない社会で生きてるけど、それでも明日を信じている」という強烈なメッセージ・ソングです。 それなのに、5人組グループのリーダーを筆頭に皆ニコニコしながら手拍子している会場をカメラが写していました。 美輪明宏が歌うとシーンとして聴き入るのに、『春夏秋冬』をニコニコしながら手拍子するなんて、webmasterには信じられません。 若い人たちが『春夏秋冬』の歌詞を知らなかったとしても、NHKのスタッフが事前に根回ししておかなかったのでしょうか?

唯一の救いは、NHK自身が自分たちのミスを認めているように見えることです。 紅白歌合戦でバックダンサーの女性にヌードをプリントした服を着せた某団長はNHK出入り禁止になりましたが、泉谷しげるは今でも他のNHK番組に出ています。 NHKの偉い人の中にわかる人がいたケースだと思います。

泉谷しげるが生きてきた時代

泉谷しげるはwebmasterより15年早く生まれています。 Webamsterが経験した歴史は、泉谷しげるが見てきたものと時代的にも立ち位置的にもずれていることは承知の上で、少し解説してみます。 伝聞や個人的な感想、記憶に頼った時系列で語るので、間違いもあることでしょう。 具体的な間違いの指摘は、歓迎します。

安保闘争

50歳未満の人にとって、安保闘争は歴史の教科書に出てくる一項目でしか無いでしょう。 Webmasterは、小学校に上がる前にTVの報道を傍観者のように見ていました。 アポロ11号が月に着陸した頃の話です(だからポルノ・グラフィティのデビュー曲の歌詞には違和感を感じる)。 具体的には10代の学生が、日米間の安全保障条約延長に反対して学生運動をしていたのです。 60年安保、70年安保の条約交渉時ということは1959年以前、1969年以前になります。 日本の終戦から14ないし24年後のことです。 1945年の終戦時、日本の20歳前後の年代は戦争で人口が減っていました。 しかも終戦時に『お国のために戦うのが正義』という価値観をひっくり返されて、カルチャーショックを受けた人がほとんどです。 その結果安保条約交渉時に日本社会の中心を担うべき中年層が少なく、いたとしても思想的な背景が不安定でした。 弱気の中年層を頼りなく感じた10代が、危機感を感じて行動したのが安保闘争というムーブメントなのだと思います。 今から考えると、当時全ての10代が確固たる思想的背景を持っていたかどうかわかりません。 『思想的背景を持たない』=『ノンポリ(non policy)』と呼ばれてバカにされることもあったので、『バカにされたくない』という動機でファッション流行を追いかけるように学生運動していた人もいたかもしれません。 形だけであったとしても哲学書や経済書を読み漁ることで理論武装して、現状肯定派の当時の大人に対抗したことは、その後社会に出た人たちが日本を発展させるのに役立ったと思います。

泉谷しげるのステージ

泉谷しげるが次のように語っているのを見たことがあります。 「いまの歌手は歌っているとステージに花束が飛んでくるが、俺が歌っていた時は火炎瓶が飛んできた」 誇張が入っているでしょうが、学生運動でそのような状況になってもおかしくありません。 レッテル貼りの大好きな日本人にとって、泉谷しげるの演奏していたような歌は、『若者文化』→ 『伝統の無視』→ 『秩序の破壊』→ 『不良文化』という短絡的な決め付けで『反社会的』とみなされていました。 そんなステージを止めさせようと警察の機動隊が出動したならば、学生が隠し持っていた火炎瓶を投げて、機動隊がガス弾で反撃する展開もありえます。 絵的には、藤原カムイのコミック『犬狼伝説』の冒頭部分から『特機隊』と重武装の過激派を引いた感じです。 つまり、ステージに向かっている聴衆は若者であり、解散させようとして突入した機動隊に誰かが隠し持った火炎瓶を投げたとしたら、流れ弾がステージに向かうこともあったかもしれません。

安保闘争の後

安保条約が延長されると、学生運動は下火になりました。 一部の人が闘争を続けたものの、『安保条約阻止』という目標を失い、活動はバラバラになったのです。 その隙をついて、保守政治家と警察が『革新思想』=『左翼』=『共産主義者』というレッテル貼りでイメージ戦略に出て、学生運動はほぼ壊滅しました。 地下に潜った一部の人達は、テロを起こしたりもしました。 レッテル貼りに『左翼』=『過激派』=『テロリスト』というイメージ戦略も追加されました。

Webmasterが大学入試の国語論説文で読んだところでは、学生運動をやめた人たちは社会人として日本の経済発展に貢献したそうです。 入門だけでも哲学や経済を学んでいて、人を動かすリーダーシップを発揮できる人は、企業が重宝したと書いてありました。

2017年の日本人から見ると、『なんて野蛮なことをしていたんだ』という感想を持つかもしれません。 でも、10代なんていつの時代もエネルギーを持て余していて、社会の秩序に閉塞感を感じているものです。 学生運動の後でも、暴走族(今と違って本当に早かった)やツッパリがいました。 1980年代の若者は商業音楽に上手に丸め込まれて、コンサートで発散していたような気もします。 今の10代は、どこで発散しているのでしょうね。 外面を飾りつつネットの匿名掲示板で他人の中傷をするだけならば、日本の自滅はすぐそこに来ているような気もします。

今や『他人に自粛を強要する』ような歪んだ安定志向の世の中になってしまいましたが、激動の昭和を生きてきた泉谷しげるやその他大勢のオヤジたちのバックボーンを想像するのも、今後を生き抜くためには必要なのではないでしょうか。 「世界最古の文字記録にも『イマドキの若いものはけしからん』という愚痴が書いてあった」などという使い古された文面で世代間のギャップを誇張する人もいます。 そんな一部の連中に踊らされることなく、レッテル貼りから脱出して個々人の意見と背景を理解できるくらいの余裕を、年齢に関係なくお互いに身につけましょう。

泉谷しげるにはいつまでも『愛すべきオヤジキャラ』でいてほしいと、願っています。

2017年7月5日 追記

2017年5月18日に逮捕された人物が、昭和46年に警察官を殺害したのではないかと疑われています。 関連して、渋谷暴動事件についてマスコミで取り上げられました。 渋谷暴動事件だけを見ると、『当時の過激派=悪い人』『当時の警察官=正義の味方なのに犠牲者が出てしまった』という印象を受けてしまうかもしれません。 これは安倍首相が嫌う『印象操作』になる可能性が高いので、解説しておきます。

犠牲者は警察官だけではありません

デモ鎮圧で死亡した人は、警察官だけではありません。 民間人のデモ隊に対して鎮圧に出た機動隊が催涙弾を水平発射して、頭部に直撃を受けた人が亡くなっています。 裁判はマスコミでも大きく取り上げられました。 裁判で被告の機動隊は「催涙弾の水平発射で死人が出ることは予想できなかった」と主張していたように記憶しています。 Webmasterは、『機動隊はそんなにバカなのか?』と、当時疑問に思いました。 『もしも裁判対策として苦し紛れの言い訳をしているとしたら、公安が現場で無茶をやって裁判で言い逃れする悪い前例を作っているのかもしれない』とも思いました。

死亡した警察官はなぜ地方出身の若者だったのか

渋谷暴動事件で死亡した警察官は、新潟から応援に呼ばれた若い人物でした。 この人の正義感、熱意に関して、webmasterは微塵も疑っていませんし、志半ばでなくなったことを非常に残念に感じます。 同時に、以下の疑問を持ちました。 『なぜ、地方から応援に呼ばれた経験の少ない若者が、危険な現場に一人だけで放置されたのか?』 アニメ『攻殻機動隊SAC』でこういう展開になる時は、公安4課か公安6課あたりの陰謀で、意図的に警察官の殉職事件を起こして自分の都合の良い状況を作り出すところです。 現実は、そこまで酷くないことを祈ります。

最後に、安保闘争で命を落とした全ての人(治安維持側とデモ隊側両方)のご冥福を祈ります。


2017年4月27日 初出


2017年7月5日 追記


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